コーヒーが飲みたくなる話
コーヒーが飲みたくなる話

雨が降っている。
ザーザーという音とほの暗い空が、部屋の空気を重くしている気がした。

朝起きて、まずため息が出た。雨の日は心が重い。休日でよかった。こんな日に仕事に行きたくはない。とはいえ、雨なので外に遊びに出たくはないし、一人暮らしの家で特別することもない。二度寝をするためにベッドに戻ってもいいが、一度目が覚めてしまった以上、このザーザー音の中でゆったり寝られる気もしなかった。

とりあえず何か飲むか食べるかしたいと思い、ふらふらとキッチンの方へ向かう。昨日コンビニでなんとなく買ったクッキーが目に入った。まあ朝ごはんはこれでいいだろう。我ながら雑な生活が身についてしまったものである。クッキーに合わせるなら、飲み物は牛乳がよいだろうか。牛乳に浸したクッキーは最高だと思う。しかし、冷蔵庫の中には牛乳がなかった。

「あー、牛乳ないじゃん。何飲もっかな」

ついつい独り言が漏れる。一人暮らしを始めてから、かなり独り言の回数が増えた。誰も聞いていないことへの安心感と、誰からも返事がないことへの寂しさが同時に襲ってくるから、独り言が出た後の心の中はなんか複雑な感じになる。でもそれにももう慣れてきた。一人暮らし二年目の私は随分と強くなったのだ。

さて、牛乳の代わりを求めてキッチンをうろうろする。ふと目に入ったのはコーヒーだった。普段からそんなに飲むわけではないが、眠気覚まし用に常備している。たまには眠いとき以外に飲んでもいいかなと思った。

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