fate

「大丈夫だよ。
どうしたの?」


『いや、別に何もないけど声が聞きたくなったから』

同じことを考えてくれてたことが嬉しくて、思わず笑ってしまう。

でも恥ずかしいから言わない。


「ねぇ、K市って山の中なんだよね?

星、綺麗に見える?」


『星?ああ、綺麗に見えるよ。

でも、今日は―…』

カラカラと窓を開ける音がした。


『満月だから、星は見え辛いかなー。……寒』


「あー、ほんとだ」

ベランダに出ると、冷たく透き通った空気が頬を刺してくる。
でも、ほんとに明るくて綺麗な満月。


『外出てたら風邪ひくよ?
ちゃんとあったかくしてないと』


そうやって、すぐに気遣ってくれるところが……

「好き――」



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