婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 席に着き、隣の椅子に花束を置いてあらためてテーブルを見ると、純白のテーブルクロスの上にロウソクが明かり、花があしらわれていてロマンチックだ。

「とても素敵です」

「二十歳は人生においても、もちろん俺たちにとっても特別な年だ。シャンパンで乾杯しよう」

 スタッフが私たちのグラスにシャンパンを注ぎ入れる。

 アルコールを飲むのは正月のお屠蘇以外初めての経験だ。先が細くなった背の高い円錐形のグラスに入った金色の液体は、見入ってしまいそうなほどキラキラしていて美しい。

「一葉、二十歳の誕生日おめでとう。素敵な年を過ごして。そのために俺も努力は怠らないつもりだ」

 三十歳の彼は、出会った頃よりさらに精悍さが増し、大人の魅力があふれて輝いてみえる。

「亜嵐さん、ありがとうございます。お礼ばかり言っているけど、感謝の気持ちをどう伝えたらいいかわからなくて」

 グラスを掲げて乾杯し、私たちはシャンパンを口にする。

 初めて飲むお酒は、口の中でぶどうのような豊潤な香りをさせ、喉に通すとかぁっと熱を帯びて胃の中へ落ちていく。お酒に慣れていない私を気遣って亜嵐さんが炭酸水も頼んでくれたので、お酒は少しずつ飲もう。

 亜嵐さんみたいな大人な男性に愛されている私は幸せ者だ。引き合わせてくれた和歌子おばあ様と祖母には、感謝しかない。

 優しい笑顔の和歌子おばあ様が脳裏に浮かび、目頭が熱くなって瞳が潤んでくる。

「どうしたんだ?」

 口もとを緩ませていた亜嵐さんは、私の様子に気づくとサッと表情を変え、心配そうに尋ねる。

「亜嵐さんとの縁を取り持ってくれた和歌子おばあ様を思い出して……」

「祖母を亡くしたのはいまだに悲しみに襲われるが、彼女は幸せだったんだ。祖母は若い頃に読んだ小説がきっかけで、俺たちを結婚させたいと思ったと言っていただろう?」

 私はコクッとうなずく。

「実はそれは祖母自身が書いた処女作だったんだ。恥ずかしくて言えなかったらしい」

「え? 和歌子おばあ様が作家……?」

「祖母は祖父と結婚した後、数冊本を出した。初めての書籍が親友の子ども同士を結婚させるという話で」

「だから私たちの結婚に思い入れが強かったんですね?」

「そうだろうな。食べながら祖母の話をしようか」

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