獅子組と私
「え……」
「やれよ!椎那ちゃんの為なら、できるだろ?」
口ごもっている桐絵に、道彦が追い打ちをかけるように言った。

「で、でも…」
「え?できないの?
“とっても仲の良い友達”の椎那ちゃんの為だよ?」
今度は、滉二が責めるように言った。

「“とっても仲の良い友達”の椎那ちゃん、困ってるんだよ?頼むよ!」
と、一朗も言い出し三人が桐絵を取り囲んだ。

「ちょっ…やめて!みんな!」
慌てて椎那が止めに入る。

「椎那、僕から離れないで!」
しかし飛鳥に引き寄せられ、腕の中に閉じ込められた。
「でも、飛鳥くん!」
「はっきり言いなよ!
本当は友達じゃなくて“ただの”同僚だって!
君の魂胆丸見え!」
飛鳥は桐絵に言い放った。

「………」
「早く、消えろ!“ただの同僚”」
道彦が言った。

桐絵は何も言えず、肩を落として去っていった。

「あ!そうだ!」
その桐絵の後ろ姿に声をかける、飛鳥。

「え……?」
「今日のこと恨んで、椎那に嫌がらせとかしたら…半殺しだからね!
僕は毎日椎那にくっつく予定だから、いつも見てるからね。これは、警告だよ!」

桐絵を見据える飛鳥の目。
柔らかいのに、鋭くて恐ろしい。

さすが何百人もの人間を束ねる、獅子組のキングだ。

「は、はい…」

「飛鳥くん…」
「椎那もだよ!」
「え?」
「ちゃんと、嫌って言わなきゃ!」
「そ、そうだよね…ごめんね…」
「僕達は椎那の味方なんだから、いつでも助けてあげるよ?だから、椎那も戦わなきゃだよ!」
ポンポンと頭を撫でる飛鳥。

「………うん!そうだね!頑張る!ありがとう、飛鳥くん。道彦くん、滉二くん、一朗くんも、ありがとう!」

大きく頷く、飛鳥達。
椎那も、微笑んだ。

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