獅子組と私
(お願い……
みんな、飛鳥くんを見ないで?
飛鳥くんは私だけの━━━━━━
どうにかして、止めさせたい!
でもせっかくみんな楽しんでいるのに、ワガママは言えない。
飛鳥くんもとても楽しそうだし……)

「椎那?どうし━━━━
なんで、泣いてるの?」
「何もないよ…」
「そんなわけないよね?どうしたの?言って?」
清美と琴子が、心配そうに顔を覗き込んだ。

「何もないよ!!ほっといて!」

「椎…那…?」
「あ…ごめんなさい……」

完全な嫉妬だ。
清美と琴子に当たってしまった。

「ほんとに、何もないよ。
大丈夫……」
「………そんなのあり得ないよね?
自分が今、どんな顔してるかわかってる?
目が潤んで、顔を赤くして、身体が昂ってるよね?
キングに惚れ直したとか?
だとすると……誰も私の飛鳥くんを見ないで!とか?」
琴子が言う。

全て、お見通しだった。

「私が言ってあげる!」
「え?だ、ダメだよ!せっかく、楽しんでるのに!
それに、四人共カッコいいし!ね?」
飛鳥達の所に行こうとする清美を、慌てて止める椎那。
「でも、私もヤキモチ妬いてるし!」
「清美ちゃんも?」
「当たり前でしょ?道彦は“私の”道彦だし!」

「そうゆうもんよ?椎那」
琴子も言った。

「そうだよね……」

「ほら、二人共!今から止めてさ、ダーリンにギュッてしてもらいな!!
あ!でも、チューはダメよ!人前だし(笑)!」
琴子がウインクしながら言い、椎那と清美はフフ…と笑って飛鳥達の元に向かった。

「ねぇ、そこ開けて!」
清美が椎那の手を引きながら、人集りを縫うように進んでいく。
「ちょっ…何!?」
「は?それ、こっちのセリフ!!」
睨み合う、清美と女達。

「なんなの、アンタ!?」
「彼女だけど?文句ある?」
「は?冗談でしょ!?」
「は?冗談で、こんなバカ言わないわよ!!」

「ちょっ、ちょっと…!清美ちゃん!
あの、本当です!なので、ここを通してください!」
椎那が間を割って入り、女達に言った。
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