獅子組と私
「ううん。椎那も辛い想いをしてたんだね。
大丈夫だよ、わかってくれたらそれでいい!」
そう言って、手を離した飛鳥。

椎那の細い手首に、飛鳥の手形がはっきり残っていた。
「ごめんね。あまりにも悲しくて、つい力入れちゃった…!」
再度手を掴み、今度は優しくさする。

「大丈夫ですよ。私が獅子倉様を傷つけたんだし」
背の高い飛鳥を見上げ、微笑んだ椎那。

「……/////椎那」
「え?はい」
「やっぱり、僕…椎那が好きだよ。
だって、ドキドキするんだ。椎那を見てると…
自分でもびっくりなんだけど、今すぐに抱き締めてキスしたいなって思ってる」

「へ!?
き、キス///!?で、ですか///!?」
「うん。それくらい好きってこと。
だから、信じてよ!僕は、椎那を騙そうとなんてしてないよ?」
「はい////」
真っ直ぐ見つめて言ってくる飛鳥に、椎那もドキドキしていた。

それにしても、カッコいい人だ。
背が高くて、一流大学の学生で、大富豪の息子。
獅子組は、有名な暴走族で色々なチームを束ねているトップ。それでいて、ちょっとしたこの街のヒーローだ。
そんな暴走族の総長(キング)

そんな人に“好き”“キスしたい”と言われて、ドキドキしない人はいるのだろうか。

「だから、僕の恋人になってよ!」
「はい」
「え!?いいの!?」
「はい?
今、私、なんて……?」

「椎那、今“はい”って言ったよ!」

「そ、そんなこと、言ってません!
恋人同士になるには、それなりの段階をふんで……」

「何言ってんの?段階をふむって、何?」

「で、ですから!お互いに知り合ってですね……
徐々に心を通わせると言いますか……」

「…………椎那って、ガード固いよね…
今までどんな恋愛してきたの?」
「え?そんな人様に言える恋愛してません…けど…」

「そんな感じだよね……」
「はい。そんな感じです…」

「………」
「………」
「フッ…!」
「フフ……」
お互い顔を見合わせて笑う。

「可愛いね、椎那って!」
「え?か、可愛い…ですか?」

「うん!ねぇ、僕と付き合ってよ!
絶対、惚れさせてみせるから!」
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