獅子組と私
【伊瀬さん、俺が指導係の猪俣 卓志。よろしくね!】

卓志もイケメンで、この柔らかく爽やかな笑顔に心を惹かれたのは否定しない。

【椎那って呼んでいい?】
【可愛い~】

【ねぇ、俺と付き合ってよ!椎那!】
この言葉で、椎那は卓志と付き合いだした。

しかし卓志は椎那を都合良く扱い、可愛い子がいるとナンパして浮気なんて日常茶飯事だった。

一度、卓志に聞いたことがある。
「なんで、私を彼女にしたの?」
「え?だって、椎那って可愛いもん。俺につり合う女は椎那くらい可愛くないとな!」
「は?浮気なんかしてるのに?」
「だって椎那って、中身面白くねぇもん!
ペアの物が欲しいとか、ずっと傍にいたいとか…ウザい!俺そうゆうの苦手だから!」

こんな男だ。
そして……椎那が卓志に抱かれることを拒んだ為、そのまま次第に距離があき別れることになったのだ。

今となっては、初体験が卓志じゃなくて良かったなと思っている。


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「悪いけど、彼の所に行くから」
このまま卓志といると、また何かされそうで足早に先を急いだ。

「待てよ、椎那!」
「ちょっ……離して」
「じゃあ、彼氏んとこまででいいからちょっと話そうよ!」
すかさず手を掴まれ、言われた椎那。

「嫌だよ。彼に、見られたくない」
「じゃあ、離さない!」
「は?」
「別にやましいとこなんてないんだからいいじゃん!」
「逆だったら……」
「は?」
「逆だったら嫌だから、やめてよ!
例えやましいとこなくても、彼が女性といるとこなんて私は見たくない!」
そう言って、バッと振り払い駆け出した椎那だった。




「あ…ちょっと赤くなってる……
強く握りすぎだよ……」
飛鳥のいる大学に向かいながら、卓志に掴まれた手を見つめていた。

「キャー!!キング様ぁ!」
門の辺りで女子大生の声が聞こえ、顔を向けると飛鳥達が囲まれていた。

「ほら、普通嫌だよ……
自分以外の女性といるとこなんて、見たくないよ……」

椎那は目が熱くなるのを感じていた。

飛鳥に出逢って、椎那はよく泣くようになった。
嬉しくて、悲しくて、悔しくて………
それまで、泣くことなんて殆どなかったのに……

椎那は駆け出し、真っ直ぐ飛鳥の元へ向かった。
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