死ぬ前にしたい1のコト




・・・



「……ねえ、一華さん? 一体、どういうつもり? 」

「……何が? 」


翌日も、続きとばかりに「おかえり」は省略された。


「へえ、そんなこと言うの。そんなに俺に言わせたいんなら、こっちおいで」

「……いや……わ……っっ」


渋るのは、もちろん「何」だか知っているからで。そんな私に、実くんには珍しく問答無用と強めの力で手を引っ張る。
着いた先は、寝室――そう、シンプルというか、色気ゼロの洗濯物(サニタリー)が干されたままの。


「なに、これ。説明して」

「あっ、ああー。だってほら、その時期もあるよ私だ……」

「違うでしょ、今」


(そんな半眼でスパッと……って、え)


「なんで、分か……」

「一緒に住んでれば普通に分かる。……で? これなーに、お姉さん? しかも、一日で何枚も干しやがって。さすがにそんな着替えないでしょ。……あのね。俺、一華さんのことすっごい好き。大好きだよ? でも、一華さんさ……ほんと、時々類い稀なる馬鹿だよね」


(一台詞で、アップダウン激しすぎ)


途中素っぽいものが紛れてたし、可愛く告白されたと思ったら、持ち上げられた途端突き落とされてる。


「それからさ、最近俺に隠れてこそこそ一人で呑んでるよね。なんで? 」

「う、え……なんでバレ……」

「だから、一緒に住んでれば分かるって。それはいいけど、何でって聞いてるの。俺と呑むのは嫌? 」


そうじゃないけど。
だって、出会いが出会いだったから、彼の前でお酒を呑むのは控えてた。
でも、商品開発に戻りたいと思って申請したはいいけど、当然ブランクに打ちのめされることもあり。ついつい、こそこそと晩酌をだな。


「……あいつとは、よく呑みに行ってたんでしょ。なのに、俺とはダメ? 」

「それは……」


醜態、晒しまくってた。
好きでいてくれたなんて思わなくて……っていうか、あんな状態を何度も見て、ユウもよく女として見てくれたものだ。


「ほーら。簡単でいいなら、俺作っといたからさ。一緒に呑も? お願い」

「え……ごはん? すごい、神……」

「期待しないで。俺の料理の腕は、一華さん並みだから」

「……チンだけでもありがたいもん」


おかしな雰囲気がどこかに行ってほっとしてると、ふっと笑って手を引かれた。
一瞬、無意識に二の足を踏んだかもしれない。
そっと、でも催促するようにくんっと再び引っ張られたのを、妙に色っぽく感じるなんて未経験の妄想に違いなかった。



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