強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 流石に眠くて間違えたということはないだろう。
 例え間違えたんだとしても、こんな毎日なわけない。

 ということはこうしたくて私のベッドに入り込んでるってことだ。


 抱き枕が欲しいだけ?
 人肌が恋しいだけ?
 それとも、私を抱きしめたいから?


 期待してしまう。

 でも、やっぱり言葉がないと確信が持てない。

 苦しい。


「……依子」

 すでに寝入ったらしいケントの寝言のような呟き。


 夢でも私のことを見てくれてるの?

 嬉しさに胸がキュッとなって、でも不安で胸が苦しくなって。

 濃くなった黒いモヤが広がる。


 ただただ苦しかった。


 つらいよ、ケント……。


 その言葉は、溢れそうになる涙と共に、グッと吞み込んだ。
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