強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 袖と胸元が白で、胸部分から下が黒のロングワンピースだ。

 初日にケントがもう一着買っていた様で、「今日は買い物だけなんだからこういう格好が良いんじゃないか?」と勧められた服だ。


 昼にはお別れするんだし、ケントには出来るだけ綺麗な自分を覚えていて欲しかったから素直に着ることにした。

 メイクは綺麗に出来る自信はなかったけれど、今日の格好やガレリアの雰囲気を思うとそこまで派手にしなくて大丈夫だったみたい。
 普段のメイクで、少しアイラインを頑張ってみるくらいで丁度良かった。


 そんな格好に、わざわざ合わせたわけでもないいつも使っているバッグ。

 確かにアンバランスだった。


「でも、そこまでお金を使うわけには……」

 今回の旅行で貯金を結構使ってしまったんだ。

 日本より安いとはいえ、バッグとなると日本円で十万は普通に超える。


 一つくらいブランド物が欲しいとは思うけれど、やっぱり躊躇う値段だった。


「何を気にしてるんだ。依子の分はもちろん俺が払うぞ?」

 当然のように言われて、フィレンツェでの記憶が蘇る。
 何でもかんでも私にプレゼントしようとするケント。

 またあんな風に買い物するというなら止めなきゃならない。
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