強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 あの絵画を今改めて見て、依子と比べた。

 どう比べて見ても絵画のような美しく肉体美にも優れた美女とは言い難い。


 依子だってちゃんと着飾れば美人になる。

 誰もが振り向くようなとまではいかないが、普通に可愛いと思える外見だ。


 だが、ウェヌスには程遠い。


 それでも絵画の理想のウェヌスと依子を比べて、どちらを欲しいと思っているのかは考えるまでもなくハッキリしていた。


 俺は、依子が欲しい。


 彼女の髪や頬に触れて、唇を塞いでやりたい。

 腰を撫でて、嬌声を聞き、彼女と一つになりたい。


 昼間はこうして共に出かけたりして、様々なものを共有したい。

 そうしてとびきりの笑顔を見せる依子をずっと見ていたい。


 依子に対する欲だったら、いくらでもとめどなく湧いてくるほどだ。



 それが分かって、俺は依子をウェヌスと思っているわけじゃないことに気づいた。

 ウェヌスかどうかなんてもう関係ない。

 俺はただ、ひたすらに依子が可愛くて欲しくてたまらない。


 依子のことが、好きなんだと自覚したんだ。


 そうなると尚更甘やかしたくなって、色々とプレゼントをしようとして怒られたり。

 少しでも肌や体温を感じていたくて、彼女の眠るベッドに入り込んだり。
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