強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
「言っておくが、寝ぼけてなんていなかったからな?」
「え?」

 周囲の反応を不必要に気にしてしまったことを恥ずかしく思いながら彼の言葉を聞く。

 どういうことだろう?


「朝日を背後にしたお前が俺のウェヌスに見えたんだ」

「……それはやっぱり寝ぼけていたんじゃあ……」

 スッピンな上に寝乱れたままだったから、髪だって寝ぐせがあったかも知れない。
 女神とは絶対に思えるはずがない私が、浴衣を羽織って朝日を背後にしただけだ。


 何よそれ?
 朝日マジックみたいな効果でもあったっていうの?


「重ねて言うが、寝ぼけてはいなかったぞ? ちゃんと依子を抱いた認識はある」

 笑顔ではあるけれど、真面目な様子で言われてはこれ以上否定することは出来ない。

 それに、また“抱いた”とか言われて恥ずかしかった。
 事実なのだけれど、そう何度も連呼されるとやっぱり恥ずかしい。


「そ、れは……はい、分かりました。……でも、それでどうして私を追いかけてきたんですか? まさかそれを言うためだけに来たわけじゃあないんでしょう?」

 私の質問にケントは「もちろんだ」と頷き本題らしい話をした。

 でもその内容に私は耳を疑うことになる。
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