強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 思い出しただけで疲れるというのに、当のケントは悪びれない。

 腹も立つというものだ。


「……本当に悪かったと思ってます?」

 でもいつまでも怒っているわけにもいかない。

 ケントと一緒に行動を共にすると約束したんだ。
 観光案内もしてもらうというのに、いつまでも険悪な態度でいるわけにもいかないだろう。


「思ってるよ。いくら寝ぼけていたとはいえ、ちゃんと約束したのにって。すまなかった」

 だから、もう一度ちゃんと謝ってくれた彼を許すことにした。


「……それなら、いいですよ。許してあげます」
「そうか!? ありがとう依子」

 許しの言葉を口にした途端子供みたいにパッと笑顔になるケント。


 うっ。
 ……ダメだな、私こういうの弱いのかも。


 男らしくカッコイイ立派な成人男性が、こうふとした瞬間に見せる子供っぽい表情。

 男らしい人が好ましいと思っていたんだけれど、どうやらそんな人が見せるギャップに一番弱いみたいだった。


 まともな恋愛もしてこなかったから今初めて気づいたかもしれない。

 そんな風に自分を分析しながら、ご機嫌になったケントの話を聞いていた。
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