強引でロマンチストなホテル王に溺愛されました。
 私はそんな彼女を目で追って、ケントと二人で話している様子をジッと見る。

 仕事の話をしているんだろう。
 でも二人はやっぱり親し気に笑顔を交えて話をしている。

 二人が並ぶとお似合いで……私はまたもや胸に広がる嫉妬心を隠すために奮闘する羽目になった。



 その後カテリーナさんは「また夜に様子見に来るから」と言い残して去って行く。

「じゃあ俺達も行くか」
「……はい」

 いつもの優しい目を向けて、ケントは私の手を取った。


 優しくて、素敵な私の好きな人。

 なのに私は対照的だ。

 どんなに隠しても、次から次へとモヤモヤした嫉妬心が沸き上がってくる。


 こんな醜い感情を持つ私が、ケントの隣にいても良いんだろうか?

 そんな考えまで浮かぶ。


「ウフィツィ美術館は俺も何度か行っている。解説は任せろ」

 自信満々に言う彼に、私は黒い(もや)の感情を隠して「頼りにしてます」と笑顔で答えた。
< 97 / 183 >

この作品をシェア

pagetop