神、恋に落ちる
「は?
………んなわけないだろ!?」
突然、店員が声を荒らげた。

「なんで?」
「なんでって、恋人はこの俺だからだよ!!?
お前、白羽とどんな関係なんだよ!?」
「白羽?
彼女、白羽って言うの?名前まで可愛い~!
どんな漢字を書くの?」
「は?ちょっ…話を聞けよ!!」
「もしかして“白い羽”?」
「は?あぁ…」

「まさに!天使ちゃんだぁ!
あぁ…これはもう……“運命”としか言い様がない!!」
店員の言葉が届いていないのか、一人で盛り上がっている命。

「だから!人の話を━━━━━
うがっ…!!!!」
命は店員の髪の毛を乱暴に掴み、台の上に押しつけた。
「うるせーよ……!」
「やめてく…れ……」

「今、誰の女とか関係ねぇんだよ!?
一徹の女じゃなけりゃ、この俺が諦めるに値しない。
さぁ、選択肢をやる!
ここで殺されて白羽に会えなくなるのと、今すぐに白羽に別れを告げて会えなくなる。
どっち?」



それから数時間後、目を真っ赤にした白羽がコンビニに出勤してきた。

「南城さん?」
「え?あ、昨日の……」
「どうしたの?泣いたの?」
「あ、いえ…」
「可哀想に…なんか、悲しいことがあったんだね。
良かったら、聞かせてよ?」
「いえ、大丈夫です!お気遣い、ありがとうございます!」
切なく笑う白羽。

その壊れそうな笑顔に、命の心は更に痛んだ。

「そう…じゃあ、話したくなったら聞かせて?
いつでも話し相手になるよ?」
そう言って、名刺を渡した。

【神石 命
0X0-XXX-XXXX】
「神石さん?下の名前は…」

「うん、“みこと”って言うの!
命って、呼んで?」
「そ、そんな……じゃあ、命さんで。
でも、命なんて…素敵な名前ですね!」

「え!?ほんと!?素敵!?」
「え?あ、はい。素敵です」
「フフ…嬉しいなぁ!」
白羽に誉められ、思わず微笑む命。

そして白羽は、そんな命を見て赤くして呟く。
「……////綺麗…///」
「ん?何?」

命は、顔を覗き込んで微笑んだ。
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