神、恋に落ちる
「おい、虫螻…
お前、金もらったんだろ?もう…関係は絶った。
気安く俺に話しかけるな!」

「痛い!!神、お願い!!離して!!」
「命さん!やめてください!!離してあげてください!
━━━━━━!!!?」
白羽は命の表情を見て、息が一瞬止まった。

それ程までに、恐ろしい表情(かお)をしていたのだ。

バッと離すと、命は空を見上げて深呼吸をした。

「ごめんね、白羽!行こ?」
本当にびっくりだ。
態度、声色、トーン、雰囲気…全て180度変わるのだから。

命は黒崎を呼び出した。
「クロ、こいつ等、地獄行きだから」
「かしこまりました」

そう言うと、車に向かったのだった。

「あ、あの!命さん、地獄って何ですか!?」
「その名の通りだよ。
言ったよね?神の世界のこと」
「で、でも!あの人、少し命さんに触っただけ……」
「その“少し触っただけ”が許されない。
それに…関係は絶ったのに、また関係を持とうとする。もう……ダメだよ」
「………よく、わかりません…」
「いいよ、わからなくて!」

そして二人は車に乗り込んだ。
「白羽、煙草吸いたいから、ちょっと出てくるね!
すぐ戻るからね!」
白羽の頭をポンポンと撫でて、外に出ていった命。
ドア前で、煙草を吸う。

白羽はガラス越しに命を見ながら、ぼーっと考えていた。

【死にたくても、死ねない地獄】

「それって…何…?」


その後命が煙草を吸い終わり、車に乗り込んで一徹夫婦と待ち合わせていた会員制のレストランに向かった。
「凄い……」
目の前でステーキが焼かれているのを見て、白羽が目を輝かせている。

「白羽は、初めて?」
「うん!こんな高級なレストラン…行ったことなかったから」
白羽と由那が微笑み合う。

「では、神から……」
「あ、白羽を一番に食べさせてあげて」

「え!?だ、ダメですよ!!
えーと、こうゆう時は……命さんが一番?
一徹さんかな?あ、でも!女性から?てことは、由那が一番?あれ?」
しどろもどろになる、白羽。

「白羽、いいから!白羽が最初に食べな?」
命が頭を撫でながら、優しく言い聞かせた。

「白羽、俺達のことは気にするな!」
「そうよ!白羽が最初に食べて?」
一徹と由那の言葉に、白羽は頷いた。

そして、ゆっくり口に入れた。
「ん!?美味しい……幸せ…」
幸せそうに微笑んだ。
その表情に命達三人は、微笑んだのだった。
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