神、恋に落ちる
命が背中をさする。

「………」
「白羽?」

「みんな、いなくなればいいのに……」

「え?ごめん、聞こえない!
もう一回、言って?」
命が白羽の頬を包み込み、顔を上げさせた。

「いえ。何もありません。
なんだか、寒いなって……
命さん、温かいから抱きつきました」
「寒い?
そうだね。今日は冷えるもんね!
ちょっと待って!」

命はジャケットを脱ぐと、白羽の肩にかけた。

「え?命さん!?
ダメですよ!これじゃ、命さんが風邪をひきます!」
「大丈夫!白羽にくっつくから!
…………それにしても、可愛い~白羽」
「え?」
「俺のジャケット着てる白羽、コート着てるみたいで可愛い!」
「フフ…そうですね。私達、身長差があるから」
そう言って白羽は、ジャケットの袖に腕を通した。

命の香水や、微かに煙草の匂いがする。

(ヤバい……泣きそう…)
こんな風に、命のジャケットを着ていると抱き締められてるみたいで、幸せで泣きたくなるのだ。

「白羽!?なんで、泣くの?」
「え?泣いてなんか━━━━━」

白羽は泣いていた。
自分でもよくわからなかった。

「どこか、店入ろう!
外は寒いし……」
「はい…」
近くのカフェに入った。

一番奥の席に、並んで座る。
命が白羽の腰を抱き、反対の手で涙を拭う。

「………すみません、命さんこれからお仕事あるのに……」
「ううん。いいんだよ?白羽の方が先決でしょ?
………どうしたの?ゆっくりでいいから話して?」


「命さんは、どうしてそんな優しいんですか?」
「え?どうしてって、白羽が大好きだから」
「だからって、もっと叱っていいんですよ?
“泣くな”とか“仕事中だろ?”とか」

「できることなら、白羽を常に甘やかしていたい。
白羽のお願いは全部叶えたい。俺なら、全部叶えてあげられると思うから。
白羽が俺を受け入れてくれたあの日から、ずっと思ってた。
俺の一番は、白羽だよ。
なんでも言って?なんでもしてあげるよ?」

「二人になりたい」

「ん?」

「二人になりたいんです。
二人だけに……」
「白羽?」
「誰の声も聞こえない、命さんの声だけ聞いて、命の匂いだけ感じて、命さんのことだけ見ていたい」
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