【完】震える鼓動はキミの指先に…。

「まさか…あやっちに好きになってもらえるとは思ってなかったから、まだ心臓バクバクしてる」

「なにそれ、私が悪いみたいじゃん」

「うん、ぜーんぶ、あやっちのせい。あやっちが可愛くて仕方ないせい」

「…ばか、もう〜」

「だって、ほら…」


どきんどきん


定まらず、乱れている鼓動。
そこに、耳を当てるようにしてあやっちを抱き締めると、あやっちはふふふっと嬉しそうに笑って、


「私と同じだね」


と言って来た。
でも流石に、あやっちの胸元に耳をやるわけにもいかないので、よこしまな思考を振り払うかのように、えへへとだけ答える。


「私ね?……石井先生は好きだったけど…それと、翔太への気持ちは全然違うんだって、やっと分かったの。いつまでも、憧れと恋を履き違えてちゃだめだって」

「あやっち…」

「もちろん、沢山傷付いたよ?先生、ひどいんだもん。けど、今は感謝してる。こうして、翔太へ気持ちを言えたから」


照れ臭そうに微笑むあやっちを、沈み掛けてきた太陽の光がキラキラと染めていった。


「ありがと…」

「うん…私も…好きになってくれて、ありがと」


ぎゅ…


それ以上は、何もいらなかった。
最後に、オレのこの震えて止まらないあやっちへの想いを…好きだという鼓動を、あやっちの細い指先を当てることで移して…。


もう一度、


「大好きだよ」


と、囁いた。


好きだからこそ、震えてしまうこの恋心。
キミに全て送るよ。
言葉と共に。
全部、全部…。


Fin.

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