クラスの男子が全員、元カレだった件




しかし、私の予想は大きく外れる。


なんと、三島志麻も補習にいる。


「枕草子の作者は、当然わかりますよね?」


というおばちゃん先生の質問に、誰も答えない中、私は三島志麻の方を見ると、三島志麻は、頬杖付きながら、指で前髪をいじり、本を読んでいるようだった。


どこを間違えたんだろう。まあどうせ1問、ケアレスミスってところだろう。


それとも私との時間を作るために……なんて淡い期待もせずにはいられない。


もちろんそんなことはないと思うけど、もしそうだったら……。


「おい、聞いてんのか?」


とふいに横から手が伸びてくる。袖をまくった腕には青白く太い血管が出ていて、高橋隆人のものだとすぐに気づいた。


「何?」


「シャーシンあるかって聞いてんだよ」


「写真? 誰との?」


「ちっげーよ、バカ。シャーペンの芯あるかって」


「ああ、はい」


高橋隆人の机に、シャー芯の入ったケースを投げた。「投げんな」と言いながら、太い指で、背中を丸めてシャーペンの後ろから、シャー芯を補充する高橋隆人に、私はどうしても聞いてみたかったことがあった。


「あんたはなんで理系で、それも特進コースに入れたの?」


小声で聞いたせいか、聞こえなかったようで「あ? 何?」と聞き返された。私は、「何でもない」という意味を込めて手を横に振った。


すると、窓の向こう、廊下から笑顔で手を振る河野浩介の姿が見えた。


「あんたに振ったんじゃない!」


と私は立ち上がってそう怒った。その後、おばちゃん先生に差され、問題に答えられなかったのは言うまでもあるまい。



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