私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです


お風呂を済ませ、後は寝るだけだ。


ゴートゥーベッド!


......。


......。


そういえば、宿題まだ残ってたんだっけ......。

仕方ない。やるか。

私はもう眠たいという目を擦りながら、ササっとシャーペンを走らせる。

......。

......。


終わったぁああああ!!!

お疲れ様、私。


腰掛けにのけぞるようにもたれ、今日は色んな事があったなぁと物思いに(ふけ)る。


みーくんとまーくんのお父さんお母さんがブラジルへ一週間行くことになって、私がお世話をすることになった。

主に料理面だけだけど。

本当は放っておけないというのは表向きの理由で、それで少しでもみーくんとの距離が近づけばいいなって期待していた。

けれど、今日も遠ざかる一方で......。




みーくんに私がまーくんのことが好きだと勘違いされてしまった。



正直、私はみーくんのことが好きだけど、キスしたいとか、変なことしたいとか、そういう状況になりたいとあまり思っていない。

でも、大好きなことには間違いがなくて......。




私は大きく息を吸って......。

吐く。




この深呼吸の一瞬で考えた結論だけど、私は今の幼馴染という関係に半ば満足してしまってるのかもしれない。

すでにお互いの好きな食べ物や性格、趣味などをよく知っていて、一緒にいた年数だけで言えば、その辺の若夫婦よりもはるかに長い。

みーくんには「葵」と呼ばれたり、年々心の距離が開いていくけど、お隣さんで幼馴染という事実はなくならない。

この好きという感情は、そんな幼馴染の関係を壊してしまうのではないか......。




期待と同時にそういう不安も抱えている。



目を瞑って、答えの出ない葛藤をしていると、カロリーを消費しきったのか、だんだんと意識が遠のいていき......。



おやすみなさい。




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「いつになったら私の元へ辿り着いてくれるの?」


白い空間。机。その上に一冊の本。

筆をとり向かい合っているのは一人の女性だった。

執筆する女性の指は細く、まるで栄養が足りていないか、重病を患っているかのようだった。



机に置かれた本はこの女性の愛書であり、彼女は何度も何度もその本を読み返している。

そう、読んでいるのだ。



では、なぜ彼女は筆を持っているのか。

それは、飽きたからだ。


愛書といえど、100回読むころにはすでに内容は暗唱できるくらいで、飽き飽きしていた。




新しい本を買うにも、彼女はもう一人で立つことができなかった。

誰かに頼んで買ってきてもらう。

そんな誰かも存在しない。



彼女は独り、新しい遊びを覚えた。

本に線を引いたり、加筆したりして、少しずつ別の物語に書き換えるというものだ。


最初は男の子が飼ってる飼い犬を消してみた。

物語に犬はあまり関与していなかったので影響はなし、しかし、餌代などの諸経費が手元に残った分、男の子はワンランク上のディナーをとった。



次に当時主人公だった女の子の妹を消してみた。

主人公にとって成績優秀スポーツ万能の妹は憎い奴で、好きな子のファーストキスまでも搔っ攫って行った。

妹を消したことで、主人公から憎悪の感情が消え、物語も短調でオチも平凡。つまらなくなってしまった。


3回目は、友達の名前を変え、主人公と性格を入れ替えてみた。

すると、主人公は男の子の兄を好きになってしまった。


4回目からは、あるルールを設けることにした。

物語の終盤で、登場人物たちにこの世界の真実を告げてみることにした


5回目は―――――

6回目は―――――



彼女が100回読むころには、最初の面影なく全く別の物語に書き換わっていた。


今も尚、彼女はその本を読み続けている。

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