彷徨う私は闇夜の花に囚われて



「ふふっ、ましろも同じことしてるんだ……嬉しい」


紅バラさんは宣言通りに私の思い出を上書きしてくれている。


こっちが恥ずかしくなるくらい包み隠さずに感情を伝えてくれるの。


呟きアプリで女の子に絡まれているのを度々見かけるけども、基本的に無視をしていて。


絶対に私を不安にさせないようにしてくれているんだ。


『そこまでしなくてもいいのに……』という遠慮の気持ちが真っ先に来るけれど。


『私のためにそこまでしてくれるんだ』って喜んでしまう私はやっぱり性格が悪いのかもしれない……。



◇ ◇ ◇



「……ましろ、眠いなら寝てもいいんだよ?」


水曜日の23時半。


夏休みに入ったとはいえ、しばらくは課外授業があるから平日は学校に行かなければいけない。


普段の私なら寝てから深いところまで意識が落ち切っている頃。


だけど、耳元で紅バラさんの声が聞こえるのは、今もまだ通話を繋いでいるからで……。


既に電気を消してベッドの中に潜り込んだ私は襲い掛かってくる睡魔に小さなあくびを漏らし、紅バラさんに気を遣わせてしまった。


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