彷徨う私は闇夜の花に囚われて



―――ピロンッ。



「はっ……」


荒ぶる感情を抑えなさいと宥められるように、彼氏からのメッセージの受信音が鳴り響いた。


私が黙っている上に耳に届きやすい高い音だったから、コメント欄は『彼氏からのメッセージか?』って勘ぐるものでいっぱいになったけれど。


私は落ち着いた心でトーク画面を開く。


『俺がなにを言っても火に油を注ぐようなものだから、なにも言わないようにしてる。一人にしてごめん』


しょぼくれているのが丸わかりな文章。


『もしもファンが離れていってましろが一人になったとしても、俺はずっとましろの味方だから。ましろは自分の思ったことを素直に伝えるといいよ』


私に一歩を踏み出す勇気をくれる文章。


『見守ってる。頑張って』


私の背中を優しく押してくれる文章。


いつもどおりの紅バラさんの包容力に心が温められ、私は配信画面に向き合った。


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