彷徨う私は闇夜の花に囚われて



すみれちゃんの暴走のときとは真逆。


紅バラさんはとても冷静だった。


でも、だからこそ、紅バラさんが激情を抑えているのがはっきりとわかる。


恐怖で心臓を圧迫されて、いつもとは違うドキドキで。


身体中にうるさく感じるほどの音を伝える心臓を、どこか遠くへ投げてしまいたくなった。


「ましろ、この人のことは無視するんだよ」

「なんで―――」

「いいから。喋っちゃダメだからね」


私の疑問を遮ってまで私の行動を制限しようとする紅バラさん。


なにかから私を守ってくれようとしているのか、それとも単なる嫉妬なのかはわからないけれど。


『そこまで私のことを好きでいてくれてるんだ……』


……なんて、前向きな解釈はさすがにできない。


思い浮かんでくる言葉は紅バラさんを否定してしまいそうな言葉ばかりで。


それらを全て飲み込んで小さく相槌を打つだけに留めた。


再び沈黙が訪れるけど、そっちの方がマシだと思い私は口を閉ざす。


紅バラさんから不穏な気配をはっきりと感じた今。


全身に纏わりつく寒気を、エアコンのせいするのはとっても難しかった。



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