彷徨う私は闇夜の花に囚われて



『俺のものってのは彼氏だってことです』

『彼氏だからってそこまで干渉するのはどうかと思いますよ。想ってるくらい別に良くないですか』

『良くないからこうして釘を刺しに来ているのですが、そんなこともわかりませんか?』


私には一切見せない鋭い牙に、スマホを落としそうになる。


私の知らないところで紅バラさんはこそこそと牽制して。


私の知らないところで私は少しずつ紅バラさんだけのものになろうとしている。


ゆるっとした部屋着なのに首元が圧迫されたように感じ、呼吸が浅くなっていく。


穏やかで優しい人だって思ってたのに、その姿は偽りで。


でも私にはずっと優しいから私にとってはそっちの姿の方が真実で。


つまり、だから、



「紅バラさんは怖くない人……」



自分の耳を通して、脳にしっかり刻み込む。


紅バラさんが酷い人だなんて思いたくない。


私は紅バラさんを好きなままでいたい。


だって、私をいつも救ってくれた人だもん。


紅バラさんが怖いなんてあるわけない。


あるわけない……はずなのに。



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