彷徨う私は闇夜の花に囚われて



『―――私が止めなかったらすみれちゃんはこの人を殺してたのかな?』



様子がおかしいすみれちゃんから目を逸らしながら、私は想像したくないことを考えた。


「に、二度と現れない!ナイフを下ろしてくれ!」

「あたしがいないときを狙おうなんて思わないでね。この子になにかあればすぐにわかるんだから」

「ひぃっ……!」


ずいっと眼前に差し出される凶器に、男の人は喉の奥から声にならない音を出す。


それでもすみれちゃんは微動だにせず相手を射抜くような視線を向けているから。


……この子はすみれちゃんによく似た別人なんじゃないかと、ありもしない妄想を思い浮かべた。


早く……早く。


明るく笑うすみれちゃんに戻ってよ……。


「すみれちゃん、私は本当に大丈夫だからそろそろ行こう?」


気を抜けば震えてしまいそうな喉にぐっと力を入れ、もう一度私はすみれちゃんの腕にしがみついた。


そして、すみれちゃんはようやくナイフを下ろして自分のポケットへしまう。


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