彷徨う私は闇夜の花に囚われて



昨年はぬくぬくとしていたその手。


私の唇に今はひんやりとした温度が伝わってくるのは外にいたせいなのか。


「来て」


この場から連れ出そうと私の意思の確認もなく強引に手を引く“元カレ”。


早々に入口の方を向いていて、表情が見えない。


なにを考えているのかさっぱりわからない。


他の男の子以上に、私は彼の考えていることが僅かにも想像つかない。


後輩くんは初対面の乱入者に驚き固まり、引き留めてくれず。


「ごめんね」


私は一言だけ謝ってカフェを後にする。


最後に視界に映ったのはいつの間にか樹くんの手によって回収されていた私の荷物と、テーブルの端に置かれていた折り目のない千円札で。


『そういうところがずるいんだよ……』


やっぱりわからない彼の行動に、心の傷が甘く疼く。


右手で溶け合い始めた二人分の体温。



それを振り払えない自分も、結局どうしたいのか全然わからない。



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