彷徨う私は闇夜の花に囚われて



いつもの張りのある元気な声じゃない。


私を落ち着かせるためにトーンを落とした優し気な声。


もう二度と喧嘩なんてしたくない。


こんなにいい子と離れるなんてそっちの方がどうかしている。


今、声を出したら、涙が溢れてしまいそうで。


口の端をきゅっと結んで俯いていると、すみれちゃんはそれを勘違いしてしまったらしく……


「あ、もしかしてあいつとなんかあった?なにかされたの!?」


今度は私を想って声を荒げた。


がしりと肩を掴まれ前後に身体を揺さぶられる。うぅ……別の意味で視界が悪い。


すみれちゃんが“あいつ”と呼ぶのは元彼である樹くんのことで。


なにかあったと聞かれたらあったと答えるけども、なにかされたわけじゃなくてむしろこっちがした側だし……。


「今日は視線を感じなかったからやっと諦めたんだって安心してたのに!まさか接触してたなんて……あいつはまじで許さない……!!」

「ち、違うよ!樹くんとはちゃんとさよならできたんだよ!樹くんは関係ないよ!!」


燃え上がるすみれちゃんを鎮火すべく、私は目元の水分を引っ込めて訴えかけた。


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