冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 晴臣に申し訳ない気持ちで蝶子はしゅんと肩を落とす。誰からも祝福される幸せな結婚を彼に与えられない自分をふがいなく思う。だが、晴臣は「上等だ」と言って不敵に笑った。

「君をないがしろにするような人間とは縁を切っても構わない。これからは俺が蝶子の家族になる。あの家のことなんて二度と思い出さないくらいに、蝶子と子どもを幸せにするから」

 蝶子は自分の肩辺りに置かれた彼の大きな手をそっと握る。目を伏せ、小さくつぶやいた。

「晴臣さんとお腹の赤ちゃんさえ一緒なら、ほかにはなにもいりません」

 蝶子は晴臣との結婚のために実家を捨てる覚悟を決めた。

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