冷徹ドクターは懐妊令嬢に最愛を貫く
 今ふたりがいるダブルベッドは、蝶子の目から見ればとても大きく、ふたりでいても余裕に思えるが、彼はこれまでこのベッドをひとりで使っていたのだ。

「まぁ新しく買ったものに比べれば少し狭いが、これでも問題はないだろう」

 ふたりは昼間、新しいベッドを買いに出かけていたのだ。購入したものはクイーンサイズで、今のものより一回り大きい。晴臣はふいに身体をくるりと反転させて、蝶子の前に膝をついた。伸びてきた彼の手が蝶子の頬に触れ、蝶子は「ひゃぁ」と小さな声をあげて身体をすくめる。

「君が俺に慣れるまでは、狭いほうが好都合でもあるな」
「な、慣れるって……」

 そんなときがくるだろうかと、蝶子は疑問に思う。

(今だって、ただ同じ空間にいるだけで心臓がはちきれそうなのに)

 晴臣は蝶子ににじり寄りながら、からかうような口調で続ける。

「今からなにをするのか、わかっているか?」

 追いつめられた蝶子は視線を泳がせる。シンプルだが高級そうな壁掛け時計の示す時刻は、夜二十二時だ。これからなにが起こるか、それは――。

「一緒に寝るんですよね」

 蝶子の言葉に、肩透かしを食らったという顔で晴臣は大きく目を見開く。パチパチと幾度か瞬いたあとで、ふっと噴き出す。
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