キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「名前を聞いていたから。サオリって名前の子は何人かいるみたいだけど、苗字が変わった子は坂下彩織さんしかいなかった」
「そう、ですよね……」
「……サリーちゃん、俺が怖い?」
「え……?」
日南先輩の言葉にバッと顔を上げる。
眉尻を下げて困ったような表情をする彼が映って、申し訳ない気持ちになった。
「ごめんなさい……」
「ん、まぁいいよ。こういう見た目だからしょうがない」
信じられなかった。
あの日南先輩が……学校一目立つあの日南先輩が、私だけを瞳に映している。
交わることのないと思っていた別世界の人が、私の目の前に立っている。
そして……。
私の心に光を見せてくれた階段の人が、問題児集団のムードメーカーと言われる日南先輩だということも信じられなかった。
日南先輩であってほしくないと願ったのは、優しい階段の人と怖い日南先輩が同一人物だと思いたくなかったから。
────これは、戸惑い。