ちょうどいいので結婚します
「その通りです。ですけどねぇ、意外に性格悪いな?」
「はは、そりゃどーも。うまくまとまったみたいで何より。まぁ、確かに、当事者じゃないせいか俺も無頓着だった。ごめん。ちょっとだけ君の気持ちも分かったよ。何も無いってわかっていても邪推しちゃうね。こう何度も一緒にいるのを見ちゃうとね」

 良一はそう言って《《なぜか》》多華子に目を走らせ、多華子も「確かに」と頷いた。功至と千幸はそれに首を傾げた。

「あれ、良ちゃん、石川さんと何かあったの?」
「いや。二人で一緒にコーヒー飲んだだけ。しかも、立ったまま。ね?」
 良一が多華子に話を振ると、多華子はふふっと笑った。
「そうですね。今度は、座ってコーヒーでも飲みません?」
「おー、今度は許してくれるんだ」

 功至は、なんだかおかしな空気になって来たので、前回良一がそうしてくれたように、空気を読んで千幸の手を引いて退散しようとした。
 
「あ、これから忙しくなるんだろ、試験もあるもんな、ちー」
 良一が千幸に声を掛ける。
「うん。でも功至さんがいるから大丈夫。頑張るね。ありがと良ちゃん。着ぐるみも買ってる」
「そうか。じゃな」

千幸と功至が行ってしまうと、多華子は眉間に皺を寄せて尋ねた。
「着ぐるみぃ?」
「そ。試験勉強に煮詰まった時、着ぐるみの部屋着あるだろ? あれ着て勉強したら受かったって話を千幸にしたら、買ったらしい」
「……へえ」
 としか多華子は言えなかった。
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