雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
質問すると、必ず分かりやすく教えてくれた。
話しかけるのも怖かった神崎さんは、今は神崎さんなら何とかしてくれる、そう思えるようになってきている。
「今回は、出張の書類、一式準備してくれる?」
「わかりました。準備します」
前に忘れたことがあったから、実は不安で、急に緊張してきた。
「今回は最終チェックするから安心しろ。だから、そんな不安そうな目で見つめるな」
神崎さんは、私の不安を察知したのか、笑いながら言葉をかけてくれた。

神崎さんに同行してから、何度も打ち合わせの様子を見ていたし、分からない所は教えてもらっていたから、同行も緊張より楽しみが出て来た。
「神崎さん、段々自分の仕事の繋がりが分かってきて、事業内容もより分かりやすくなりました」
「それなら、俺がお前に振り回されても、連れて行く甲斐があったよ」
「もう、大丈夫です」
「そうあって欲しいよ。朝比奈と出張すると何かハプニングが起きるからなぁ」
神崎さんはいたずらっぽく笑っていた。

出張は何事もなく夜を迎え、接待が終わり、ホテルについたのは、22時。
チェックインしようとすると、お腹の大きい奥さんとご主人がフロントにいた。
「誠に申し訳ございませんが、満室でございまして」
「どんな部屋でもいいんですが、空いていませんか。キャンセルも?」
「申し訳ございません」
よほど急なんだろうか。
「あのー、どうかされましたか?」
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