雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
【最終同行研修 気づき編】
明くる日、どうなるんだろうと思っていただけど、神崎さんはいつもと変らず、普通だった。
「朝比奈、今週の水曜日、出張一緒だな。俺の成長しているところ、見せるからな」
水森くんが私の席のところに来て、声を掛けてきた。
一緒に出張?
そんなこと聞いてない。
「あっ、そうだ朝比奈、言い忘れてた!神崎とだと気を使ってばかりだから、同期と同行なら気兼ねなくていいだろ?」
長井さんが私と水森くんの会話を聞いて、言い忘れの告白をしていた。
水森くんに同行・・・
昨日の事がなければ、私は喜んでいたけど・・・
「あぁ、長井さん、すみません、その日、朝比奈、俺と大阪出張なんでダメですよ」
神崎さんが、長井さんに向かって言う言葉を聞いてびっくりした。
その話も聞いてない。
「あの・・・」
「今回は神崎1人で行けよ」
「ダメですよ。先方には朝比奈の名前出して、連れて行きますって言ってますから。他の客先に行きましたなんて、言えないでしょ」
「うーん、それなら仕方ない。水森、1人で行って来い」
顔が少し赤みがかった水森くんは、怒りを感じる声で
「わかりました」
そう一言告げて、席に戻って行った。
「じゃあ、神崎宜しく」
「はい」
長井さんと神崎さんとの会話もそこで終わった。
私は、周りに聞こえないように、神崎さんに声を掛けた。
「神崎さん、私、聞いてないですけど」
「あぁ、今決めたし、客先にも言ってない」
「えっ?」
私は目を丸くしてびっくりしていると
「嫌ならいいけど。傷心中のお前を仮彼の俺がかばっただけだしな。水森と行けば?」
私は、昨日の水森くんと松草さんの事を思い出した。
水森くんとどんな顔して1日過ごしていいか分からない。
「神崎さんに同行します。お願いします」
神崎さんに向かってお願いした。
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