雨降る傘の下で、愛は始まる〜想う愛に想われ愛
【心配は的中 ~朝陽】
遅い。
そろそろ終わる時間なのに電話も来ないし、まぁ同期で話をしてるんだろうと思っても、殆ど人の出入りが無くなってるのに、まだ出て来ない。
電話入れてみるか。
そう思って、ホテルの外庭の方に目を向けた時、ベンチの人影が目に映った。
あれは、美咲か。
隣にいるのは男?
暗くて見えないけど、会社の人だったら、俺の顔を見たらわかるだろう。
俺は前髪を手でぐしゃぐしゃっとして、念のために持ってきていた伊達眼鏡と、帽子をかぶって、急いで美咲達に近寄った。

「すみません、俺の彼女の美咲がご迷惑おかけして」
この顔・・・確か西日本支社で見かけた気がする。
「えーっと、朝比奈、この人は?」
美咲はうつろな目を俺に向けた。
酔ってるのか?
美咲は、じっと俺を見つめた後
「・・・神」
名前を呼びそうだったので、キスをして言葉を遮った。
「帰るぞ」
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