惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 突然のルーカスとの別れに、私は途方に暮れて、ただただ悲しんだ。
 左手の小指を失った事よりも、好きな人が目の前から消えてしまった喪失感の方が大きかった。

 ずっと一緒にいるんじゃなかったの・・・?
 同じ気持ちだと思ってたのは私だけだったの・・・?
 彼と交わした約束の証である、左手の小指に目をやったが、そこには何も無い。
 小指と共に、あの日の約束も失ってしまったんだ・・・。


 それから私はしばらく家に引きこもり気味になった。
 それまで私は、いつか首都に住んでみたい、華やかな暮らしや、綺麗なドレスに身を包んで夜会なんて楽しんでみたい・・・そんな夢を語った事があった。
 しかしそんな夢も思い描くことはなくなった。

 私の好きな人を奪っていった首都が嫌いになった。


 ルーカスが村を出てから10年後・・・。
 私が22歳になった時、彼は突然私の家にやって来た。
 見るからに豪華そうな馬車から降りてきたルーカスは、煌びやかな服装に身を包み、私を見て少し照れくさそうにしていた。

 大人になって初めて見た彼は、とても逞しくとにかく格好良くて、やはり彼は本当に王子様だったのかもしれないと思った。

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