惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
0:彼女との再会(ルーカスside)
――――首都での暮らしは楽ではなかった・・・。田舎村から来た平民の俺が、首席でアカデミーを入学した事は知れ渡り、それなりに嫌がらせも受けた。
 アカデミーを卒業後に騎士団に入団した時も、公爵の護衛として雇われた時も、独立して経営者となった時も・・・全てが思い通りに行ったわけでは無かった。
 少しでも判断を間違えれば自分の死に直結する・・・まるで針山の上を命綱の無い綱渡りでもしているかのような・・・そんな日々だった。

 それでも、エリーゼがきっと俺を待ってくれている・・・。

 そんな思いと、エリーゼと過ごした日々の記憶が俺を支え、闇に覆われ見えなくなりそうな道を照らし続けてくれた。
 
 人脈に恵まれ、運も味方になってくれたおかげで、22歳にして男爵という爵位を手にする事が出来た。

 そして俺はすぐに、エリーゼを迎えに行くための準備を始めた。
 長時間の移動で、体の負担を少しでも軽減させるために、乗り心地に拘った馬車を特注した。
 俺自身も滅多に着ることが無い正装に身を包んだ。
 身なりも念入りに整えてもらい、俺の姿を見た屋敷の侍女達からは次々と溜め息が漏れ出た。

 エリーゼとは10年振りの再会になる。
 毎日の様に恋焦がれ、この日を待ちわびていた。
 10年経った彼女はきっと素敵な女性になっているに違いない。

 俺だって、もう彼女の前で何も言えず狼狽えるだけの俺ではない。
 彼女を守る力も、財力も地位も手にした事は、俺の中で強固な自信となった。
 あとは胸を張って彼女を迎えに行くだけだった。

 エリーゼと会える喜びと期待に胸を膨らませながら、気もそぞろに俺は馬車に乗り込んだ。
 村から帰る時には目の前にエリーゼがいる・・・そんな姿を想像しながら、俺は村へ向けて出発した。


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