惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「そうね・・・振り回される私の気持ちにもなってほしいわ・・・」

 その言葉がグサリと俺の胸を深くえぐり、その痛みに耐える様に体を震わせた。
 そんな俺の頭にはある疑問が浮かんできた。

 あの惚れ薬は本当に効いていたのだろうか?

 確かに、見つめ合った時のエリーゼの反応を見て、俺の事を好きになったのだと確信した。
 しかしエリーゼの口からはまだ、俺を「好き」という言葉は聞いていない。
 もしかしたら全部俺の勘違いで、エリーゼは俺の事を好きになった訳じゃなかった・・・?
 だとしたら、俺はエリーゼの気を引きたくて、惚れ薬と書かれた偽物を飲んだ、ただの最低な勘違い男じゃないか・・・?

 サーっと全身から血の気が引いていくのを感じた。

 俺は・・・なんて事をしてしまったんだ・・・。

「この惚れ薬って本物だったのね・・・」

 ・・・・・・・・・え・・・?

 この世の終わりとも思える程に絶望する俺の隣で、エリーゼが空になった瓶を見つめていた。

 ・・・惚れ薬は本物だった・・・だと・・・?
 それはつまり・・・やっぱりエリーゼは俺の事を好きになったという事か・・・!?

「あ、ああ・・・そのようだな・・・?」

 その事をはっきりと確認したくて、俺はエリーゼの顔を覗き込んだ。俺の視線に気付いた彼女の顔は、再び赤く染まっていく。

「エリーゼ・・・俺の事、好きか?」

「・・・ふぁ!!?」

 俺の問いかけに、エリーゼはなんとも可愛い声をあげると、湯気が出るほど顔を真っ赤に染め、パクパクと口を動かしているが声にはなっていない。

 ああ、もう・・・言葉はいらないな。
 その反応だけで伝わってくるエリーゼの気持ちに、俺は言葉にならない幸福感で満たされていった。

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