惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
「待ってルーカス。いくらユーリでも、さすがにそんな事するはず無いわ」

 フツフツと湧き上がる怒りは、エリーゼの言葉で少し落ち着きを取り戻す。
 だが、ここでどうにか白黒はっきりさせておかないと、俺の気が収まらない。
 人様の大事な手紙を盗んだ奴を、このまま野放しにしておく訳にはいかない。

 俺は積年の恨みを込め、ユーリを睨みつけようとした時、エリーゼがなだめるように口を開いた。

「きっとユーリは悪くないわ。だってルーカスが言ってたじゃない。手紙が届かない事はよくあることだって」

「「「・・・・・・・・・」」」

 エリーゼの言葉に、俺達は口を(つぐ)み、黙り込んだ。

 長い沈黙の後、俺は真顔で口を開いた。

「・・・・・・・・・そうだな。よくあることだな」

「ええ・・・よくあるわね」

「ああ、エリーゼ嬢の言う通り・・・よくあることだ」

「そうなのね・・・やっぱり大事な事は面と向かって伝えないとダメね!」

 エリーゼはうんうんと納得するように頷いている。

 そうだな・・・手紙のことはもういいだろう。
 結果的に、こうしてエリーゼと両想いになることが出来たのだから・・・。
 今はこの幸せを素直に噛み締めるとしよう。

「あら、エリーゼ、手袋はもういいのかしら?」

 ユーリは手袋をしていないエリーゼの左手を不思議そうに見ている。

「ええ。もう私には必要ないから・・・。あの日の出来事は、私とルーカスが守りあった武勇伝として、子供達にも伝えていくわ」

「ああ、そうだな・・・」

 俺達の子供達、さらにその孫達にも・・・。

 ・・・・・・なん・・・だと・・・!?

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