惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
番外編:初昼その後・・・
「ん・・・・・・」

 目を閉じてても分かるほどの眩しさで目を覚ますと、カーテンの隙間からわずかに陽の光が差し込んでいた。
 だけどまだ薄暗い。ちょうど夜明けくらいだろうか。
 やけに寝心地の良いベッドと心地よい温もりに包まれ、もう少し寝ていようかと思った時だった。

「おはよう、エリーゼ」

 その声で今度こそハッと目が覚める。そして気付いた。頭の下にある熱いくらいの熱を持った筋肉質な腕の存在に。

 そう、今の私はルーカスの腕に頭をのせた状態・・・つまり、腕枕をされている。
 私の視線の先には逞しくも色気のある胸板があらわになっている。私は昨日、幾度となくこの体に見惚れ、どれだけ縋っただろうか。
 そんな事を思い出し、頭の中の温度は一気に沸点まで急上昇した。

 情熱的な一夜を過ごした男女。朝を迎え、女は男の腕に抱かれて目を覚ます・・・そんなシーンはロマンス小説で何度か読んだことがある。2人は少し気まずい気持ちになりながらも、ベッドの上で愛を囁き合う・・・いわゆるピロートークが始まる。
 「うふふ」「あはは」とくすぐったくも嬉し恥ずかしなお話で盛り上がる・・・そんなシーンだった。

 だけど、私はもう知ってしまった・・・。
 ピロートークなんて、所詮は物語の中だけの話。
 そんなモノ実際には存在しないのだと。

 なぜなら、この腕の中で目覚めるのは今回が初めてではない。今回の目覚めでもう4回目なのだ。
< 207 / 212 >

この作品をシェア

pagetop