惚れ薬を飲んだせっかち男爵はとにかく今すぐ結婚したい
 物語から飛び出てきた様な悪役令嬢が去り、緊張から開放された私は近くの椅子によろける様に腰掛けた。

「エリーゼ、大丈夫か?」

「え、ええ・・・ちょっとビックリしただけだから・・・」

「少し休むといい。俺はちょっと店主と話があるから・・・すぐ戻る」

 そう言い残し、ルーカスは店主の所へ行き、話をし始めた。
 話している内容は分からないが、今頃あの大量のドレスを購入する話でもしているのかもしれない・・・。
 ドレス選びから悪役令嬢の登場・・・なんだかドッと疲れた・・・。

「ふふふ・・・あの公爵令嬢にあんな事を言えるのはルーカス様くらいですよ」

 一息つく私に、先程採寸をしてくれた女性従業員が声をかけてきた。
 ・・・公爵・・・令嬢・・・?

「え!!?あの子って公爵令嬢なの!!?え、じゃあ今お屋敷に来てるのって・・・公爵様!?」

「ええ、サンドロス卿は昔、その手腕を買われて公爵様の補佐として働いていた時期があるのですよ。公女様は小さい頃からサンドロス卿に懐いてましたよ。まあ、あの容姿ですから当然でしょうね」

 ああ、イケメンだからってことね・・・。

「まだ公女様が幼い頃、ドレスを買いにサンドロス卿とお店に来たことがありましたが、サンドロス卿が選ぶ時間を与えず帰ろうとするので、公女様は結局ドレスを買えずに泣きながら帰って行きましたよ」

 ルーカス・・・子供相手に何やってるの・・・?
 大人気ないにも程がある・・・。
 もしかして、以前ルーカスが誰かと来た・・・っていうのは、小さい頃の公女様の事だったのだろうか。

「サンドロス卿が公女様を特別扱いしたことは、今も昔もありませんよ。もちろん、それは他の令嬢にも言える事ですが・・・ふふ・・・サンドロス卿は本当にお嬢様の事をお好きなのですね」

 はい・・・惚れ薬の影響ですが・・・とはさすがに言えないけど・・・。

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