愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜



「……はっ」



 ひゅっと息を吸い込む。
 僕の浅くなっていく息に気が付き、春香は僕を抱きしめる腕を強くする。


 春香は正義感の塊だ。
 だから夜の街で寝床を探す僕を見兼ねて受け入れてくれた。
 出会って日の浅い人間の為に、ただ同情するのではなく、それ以上にここまで怒ったり悲しんだりできる人、なかなかいない。


 だから春香の言葉には重みがある。そうなんだ、って自然と受け入れられる。


 ────だから、僕は……。



「……本当に?」
「うん」
「もう、いいのかな」
「うん」
「なんの為に、生まれてきたのかなんて……考えなくていい?」
「いい」
「……僕は、僕のために……生きていい?」
「……いいんだよ、ユキ」



 春香がとんでもなく優しい声を出すから、視界が滲んでいく。目尻から一筋温かい滴が頰を伝っていく。



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