永遠と幸〜すべては出会ってからの1ヶ月間〜
『あのね、好きと感じた胸が高鳴ったその瞬間から恋は始まってるんだよ』

当時、1ヶ月間だけ付き合った女の子がいた。
好きと言われてもよく分からなくて告白は常に断ってきた。
だけど、その子が告白してきた時僕は何故か「付き合おう」と頷いていた。

そのこと付き合っていた1ヶ月間は僕の今までの人生の中で特別だった。
全ての情景が彩って見えたんだ。


僕はいい意味でも悪い意味でも目立った。
女子からはイケメンだとチヤホヤされ、男子からはどうせ顔だけだと嫉妬や憎悪といった負の感情を向けられていた。

僕自身もどうせ顔だけと思っていた。
告白が嬉しいという感情から鬱陶しいという感情に変わったのはいつ頃からだろうか。
もう、覚えていない。

僕に近づいてくる人や告白してくる人は派手な人が多かった。
僕自身は地味でいたい。
目立ちたくないと思っていた。それは今でも変わらない。

休み時間や放課後、教室に来られて呼び出されるのも面倒臭くなった僕はそういった空き時間教室を出て1人になれる場所を探した。
1番いいのは階段、屋上前の踊り場だった。
そこに隠れて昼ご飯を食べたり静かに読書ができることが1番の安らぎだった。

踊り場で過ごすようになって数日。
とうとう見つかってしまった。
それが、たった1ヶ月付き合った女の子だった。

その子との接点なんて何も無かった。
彼女は僕に聞いた。
「こんなところで何してるの?」
僕は答えた。
「休んでる」
彼女は小さく笑う。
「ふふっ、休んでるって…んふふ」
僕は聞いた。
「君は何でここに。もしかして僕よりも前の先客だった?だったらごめん」
そう言うと彼女はまた笑って首を横に振った。
「違うよ、屋上に行きたいなって思ったらここに君がいたの」
「…?屋上って入れたっけ?」
「ううん、入れないよ」
彼女は何でもないように答えた。

その日から時折彼女は踊り場に来るようになった。
時々僕より先に踊り場にいることも。
僕らはたくさんのことを話した。
何が好きで、何が嫌いで、何が得意で、何が苦手で…。

互いのことをある程度知った時、彼女は僕に言った。
「ねぇ、お願いがあるんだけどいいかな?」
「…何?」
「あのね、私と付き合って欲しいなって。ううんこの言い方はずるいか…」
そう呟いて彼女は深呼吸をしてから改めて言う。

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