消えた未来
 そしてそれを聞いた星那は、ますます怒りをあらわにした。

「なにそれ、ありえないんだけど」

 星那はそのまま立ち上がる。

「どこに行くの?」

 薄々わかっていながら、星那の背中に問いかける。

 星那は振り返ると、私を睨んだ。

 怒りの矛先は久我君のはずなのに、抑えきれないみたいだ。

「保健室。久我の奴に一言言ってやらないと、気が済まない」

 こんなときだけど、私は星那が幼馴染でよかったと思った。

 無条件に味方でいてくれる人が近くにいるということが、これほど救われるとは知らなかった。

「ありがとう、星那」

 嬉しさのあまり、私は会話の流れを無視して言った。

 唐突にお礼を言われて、星那は戸惑いの表情を浮かべる。

「星那が怒ってくれたから、なんだかすっきりした。だから、できれば保健室には行かないで」
「でも」

 それでは怒りが収まらないと言おうとしたのだろう。

 だけど、星那は言葉を飲み込んでくれた。

「本当にいいの?」

 一瞬なにかを考えたのち、静かに尋ねてきた。

「まあショックだったけど……星那も言ってたでしょ。今回は、久我君には迷惑でしかないって。それでも行動し続けたのは私。つまり、自業自得なんだよ。だから、次は久我君のことも考えて動いてみようと思う」
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