消えた未来
 私は市外の大学に進学した。

 大学生になると、あのころのように久我君のことを聞きまわることはしなくなった。

 さすがにできなかったし、久我君を知らない人のほうが多くなっていたから、聞いたところで望む答えは得られないだろうと思って、しなかった。

「真央ちゃんは、彼氏とか好きな人、いないの?」

 大学生になって数か月、ある程度グループができ始めて、私は四人グループでいることが多かった。

 そして、まだお互いに趣味も知らない状態だと、恋バナになりやすいらしい。

 現に、学籍番号が一つ前で仲良くなった大原さんに聞かれた。

 しかしこういう話題は困る。

 いると言えば、深堀される。

 いないと言えば流されるだろうけど、そんな嘘をつくと、自分で久我君の存在をなかったことにしているようで、できなかった。

「彼氏はいない、けど、好きな人、なら」

 言葉に困りながら、正直に言うことを選んだ。

 根掘り葉掘り聞かれる覚悟はできている。

「それって、どんな」
「ねえ、ルナの話も聞いてよ」

 予想通りの展開になるところを遮ってくれたのは、最も恋バナが好きな結城月渚さんだった。

 いや、恋バナというより、惚気と言ったほうが正しいかもしれない。

 付き合いはまだ短いけど、それがわかるくらい、彼女は何度も彼氏の話をしていた。
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