消えた未来
「帰りに会ったの?」

 もう一度頷いて、昨日の出来事を話した。

 星那はわかりやすく驚いている。でも、その中に怒りが見えた。

 それから、星那は私の両肩を掴んだ。

「真央はつまらなくなんてないからね」
「ありがとう、星那。でも、私が女の子が転んでも見てただけなのは、事実だから」

 自分で言いながら悲しくなる。星那は少しだけ困ったような顔をした。

「だからって、真央をつまらないて言っていいとはならないと思う。真央、気にしなくていいからね」

 星那は力強く言ってくれた。

「ありがとう」

 口ではそう言ったけど、あの言葉を気にしないでいられるとは思えなかった。

 そして星那と他愛もない会話をしながら、学校に向かう。

 気にしないなんて無理だろうと思っていたけど、星那と話しているうちに気分が変わって、自然と笑っている自分がいた。

 だけど、教室に久我君がいるのを見て、その楽しかった気持ちはあっという間に消えてしまった。

 気まずさを感じながら、久我君の前に座る。

 またなにか言われるような気がして、昨日とは違う意味で、生きた心地がしなかった。

 その地獄のような時間の中で、私はあることを思った。

 どうして久我君に、あんなふうに言われなければならなかったのだろう。
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