消えた未来
 五年になって、少しずつ周りと距離をおくようになって、学校に行かなくなった。

 そうなると、当然だけど、母さんが心配してきた。

 でも、そのときはそれが鬱陶しく感じて、俺は反抗した。

「母さんには関係ない。どうせわからないんだから、ほっといてくれ」

 今となっては、つい言ってしまったのか、本心だったのかわからない。

 ただ、確かにそう言ったのは覚えている。

 すると、母さんは泣きながら謝った。

「ごめんね、侑生……ごめん……」

 その涙を見て、すぐに間違ったことを言ったと思っていれば、よかったんだと思う。

 当時の俺は、当たり前にできていたことができなくなった苛立ちと、そのときの状況を母さんのせいにして、八つ当たりした。

 つまり、母さんとの関係を悪化させた。

 そこからは歯止めが利かなくなって、ことあるごとに、母さんを泣かせた。

 母さんの涙に戸惑っていた俺は、もういなかった。

 それを叱ってくれたのが、蘭子だった。

「苦しいのは、あんただけじゃない」

 強烈なビンタと、苦しそうな表情と、泣き叫ぶような声で、目が覚めた。

 そして気付いた。

 俺は、俺が一番可哀想で、なにをしても許されると勘違いしていたんだと。
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