酔いしれる情緒
永遠を誓いましょう。



「…あの車はなんなの?」





走り出して間もない今、私のその質問に対し春は躊躇うことなくさらっとこう言う。





「俺と凛の関係を世間にばらまいてくれる人達が乗ってる」





おかしなことを言ってるって分かっているのだろうか?



二股疑惑。



そう記事にされてもいいってことらしい。

やっぱりドMだ、コイツ。





と。





「凛。」





赤信号で停車した車。



春は私の左手を握りながら言った。





「嫌なら、ここから逃げ出してもいいんだよ」


「………………」


「不安にさせてしまったのは本当だし。
軽蔑されていても仕方がないと思ってる」


「………………」


「ごめんね。強引に連れ出して」





寂しげな顔をして無理に笑顔を見せる。



逃げてもいいなんて言いながら
私の手は掴んだままだけど、


私がここから逃げ出すことを決めたなら


春はきっとこの手を離すだろう。



もう二度と、私の前にも現れないつもりだ。



出会う前のように、繋がりのない関係に。



春はその覚悟でそう発言した。



そんな気がする。





「ほら。早くしないと」





歩行者の信号がチカチカと点滅し始めた。


それは車道側の信号がもう少しで青に変わることを示してる。





確かに………逃げるなら今のうちだ。



ここならあの本屋まで自力で戻れる距離。



仕事だってまだ終わっていないんだから
戻ることが正しい判断だと思う。


面倒事にも巻き込まれそうだし。





そう……分かってるのに。






「………───逆に。

この不安を払拭するまで私は逃げないし、
今までの事を根掘り葉掘り聞くまではアンタを逃がすつもりもないから。」







この後どんな事が待ち受けようと



久々に触れたこの手を


私だって、握り返すに決まってる。

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