request
「コレ、割れてなくて良かったね。」
床に落ちた携帯を拾うと「はい。」と渡してくる。
優さんが言う通り、画面は割れていない。
「俺もー行くから。それで桜井に電話するなりしたら?
襲われた、とでも言っといて。」
それだけを言い捨てると
クスリと笑って教室から出て行った。
私だけしかいないこの空間。
だけど心は落ち着かない。
ずっと、心の奥がザワザワとへんな感覚。
(蒼空さん以外とキスしちゃった……)
ショックが大きいのはたぶん私もで、
思い出してしまうと気持ち悪くて寒気がする。
自然と出る涙は頬を伝うばかりで、拭う気力さえも今はない。
(誰か…いる)
廊下から聞こえる音に耳を傾けていれば、
教室前を通った人と目が合った。
「……えっ!?お、おい!どーしたんだよ!!」
ボーッとする私はその人が誰か知るのに少し時間がかかってしまって、
「こ、ばやし……」
やっと気づいてその名を呼ぶ。
私が教室の中で1人泣いてるから、びっくりして駆け寄ってきてくれた。
「どーした!?何があった!!?」
「うぅ……っ……」
「えぇっ!?ちょっ、どーしたら…!」
慌ただしく周りをキョロキョロと見渡す小林。
(やばい困らせてる、泣き止まないと…)
心の中ではそう思っているのに、知ってる人がいて安心したからなのか
一向に涙が止まらない。
「ティ、ティッシュ…!いやハンカチか!!あーー!俺今日持ってきてねぇー!!!」
そう叫ぶ小林は「あ!そうだ!」と、誰かに電話をかけていた。