想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「・・・はい」
震える手で受け取ったエコーを、私は抱きしめる。

「これが妊娠中絶の同意書です。」
医師の手から渡されたその一枚の紙にも手を伸ばす。

この紙切れ一枚で・・・この命は・・・・簡単に消えてしまう。


診察室から出た恵理に気づいた宏貴は、すぐにベンチから立ち上がり恵理の隣に寄り添う。

『彼はあなたからのどんな不器用な言葉も受け止めてくれると思いますよ。たとえうまく言葉にできなくても、ちゃんと知ろうとしてくれる。何度だって、向き合ってくれる。今も、廊下であなたを心配して待ってくれているでしょうから。』
磯貝医師の言葉を思いだす。

『彼にはあなたと向き合う覚悟がある』
恵理は、隣で自分を支えてくれる宏貴の顔を見る。
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