タングルド
熱いシャワーで体の汚れだけでなく、疑念も流れて仕舞えばいいのに。

元カノの話を躊躇なく話してくれた。
森川彩香についても聞けば教えてくれるだろうか?ただ、それを聞く勇気が今の私にはない。

体を拭いて、私のベッドで先に
シャワーを浴びた賢一が待っている。

抱かれたい

メチャクチャになるほど抱かれたい

そう思う

だけど、森川彩香の存在がブレーキをかける。

もし、浮気相手なら拒絶をすれば用済みになるかもしれない。


バスルームから出ると、賢一はそれまで見ていたスマホの電源を落としてテーブルに置く。

私の腰に腕を回して抱き寄せキスをする。
舌が絡まり頭の中が白くなった途端

「わたしが賢一さんの婚約者」

森川彩香の顔が浮かんだ。

「ごめん、今日は」

「分かった、じゃあ寝ようか」

「いいの?」

賢一は微笑みながら私を抱きしめてそのままベッドの中に沈み込んだ。

「俺は雪が好きだから抱きたい、でもそれはあくまでもお互いがその時求めていたらの話で、雪がなんらかの理由で気がのらないのならする必要は無いよ。俺はSEXをするために雪と付き合っているんじゃない。雪が好きだから一緒にいたい。だから、嫌な時は嫌と言ってくれた方がいい、したい時もじゃんじゃん俺を誘ってくれ」

「うん」
賢一の胸板に頬をつけ目を瞑る。
優しく抱きしめられた腕の中はとても居心地がよく暖かで、何よりも賢一の言葉が心に染み込んで睡眠不足だった私はゆっくりと意識を手放した。

完全に眠りにつく直前に賢一の言葉がうっすらと聞こえた。

「雪の心を煩わせている本当のことは何なんだろう」
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